頭にも帯状疱疹?

#4. 頭にも帯状疱疹?

Q

68歳女性、数日前から頭部にチクチクする違和感に気づきましたが、次第に痛みとして感じられると共に赤くなって水ぶくれが出てきました。何かにかぶれたのかもと思い近くの皮膚科を受診したところ、帯状疱疹と診断され内服薬の処方を受けて軽快してきました。帯状疱疹は脇腹にでるウイルス性の皮疹と聞いていましたが、頭にも出るのでしょうか。

A

帯状疱疹の原因は水痘・帯状疱疹ウイルス

 帯状疱疹はヘルペスウイルスの一種である水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされます。初感染時には水痘(みずぼうそう)を引き起こしますが、一般に小児期に感染することが多い代表的なウイルスのひとつです。感染を逃れて免疫がないまま成人になってから感染すると重症な経過を取ることもあります。

 

みずぼうそうの治癒後も神経周囲の細胞に潜伏して帯状疱疹を引き起こす

 このウイルスはみずぼうそうの治癒後も完全に体内から排除されることはなく、神経周囲の細胞に潜伏して、何らかの原因で免疫力が低下すると再び活性化し、今度は帯状疱疹を引き起こすという厄介なウイルスです。典型的には脇腹の肋間神経に沿って増殖しながら神経細胞を傷つけ皮膚に達し帯状の水ぶくれを形成することが、帯状疱疹の名前の由来です。好発部位は肋間神経や顔面の三叉神経ですが全身の知覚神経に起こり得ますので今回のように頭皮にでることも有り得ます。身体の片側にでることが多いのが特徴です。年齢的には50才から増え始め60-70才代でピークになるようですが過労やストレスが引き金で若い人に発症することもあります。

 

帯状疱疹が疑われたら速やかに医療機関を受診し治療を開始

 大切なことは特徴的な水ぶくれが現れて帯状疱疹が疑われたら可及的速やかに医療機関を受診し、通常は内服で、重症例では点滴で抗ウイルス薬の治療を開始することです。1週間ほどで水ぶくれはかさぶたになり治癒しますが、治療開始時期が遅れると帯状疱疹後神経痛と呼ばれる非常に頑固で強い局所的な神経痛に悩まされ、抗うつ剤等の内服や神経節ブロック等の治療でも難渋することが少なく有りません。

 

欧米では高齢者を対象に水ぼうそうのワクチンが帯状疱疹予防として承認され普及

 欧米では免疫力低下の観点から60歳以上を対象に水ぼうそうのワクチンが帯状疱疹ワクチンとして承認され予防目的で広く使われています。大規模な調査で帯状疱疹の発生率は半減し、帯状疱疹後神経痛の発生率は6割低減したという報告もあります。日本でも2003年に高齢者に接種することが承認されましたが水痘と同じく任意接種で自費となるため未だ普及していません。高齢者で、帯状疱疹をしたことがない人には帯状疱疹後神経痛を回避するためにもワクチンの使用を考慮したいところです。

 

免疫力が落ちると繰り返し発症するおそれ

 また体力低下や抗がん剤治療等で免疫力が落ちると繰り返し発症する可能性も高まります。日常生活で疲労、睡眠不足、ストレス、風邪あるいは日光等の刺激を避けることもある程度帯状疱疹の発症予防につながると考えられます。

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