運動で誘発される食物アレルギーとは?

#38. 運動で誘発される食物アレルギーとは?

Q

 先日中学3年生の次男が学校で昼休みにサッカーをしていて、急に蕁麻疹やむくみ、咳が出て、呼吸困難となり病院へ救急車で搬送されました。その時食べ物が原因の運動することで起きるアナフィラキシーの疑いがあるため専門科での精密検査を勧められました。いったいどのような病気なのでしょうか?

A

 『食物依存性運動誘発性アナフィラキシー』と呼ばれる比較的稀な

                               食物アレルギー  

 これは『食物依存性運動誘発性アナフィラキシー』と呼ばれる比較的まれな食物アレルギーのことで、特定の食品(小麦や甲殻類が多い)を食べてから数時間以内に運動をすると現れる急激なアレルギー反応です。特定の食べ物を食べただけでは症状は無く、特定の食べ物を食べた後に運動をすると初めて症状が出るのが特徴です。

 

特に中学生の男子に多くみられ昼食後の激しい運動で出易い

 学童生徒の12000人に1人の割合で存在すると言われていますが、初発年齢は中学・高校生から青年期が多く、特に中学生の男子に多くみられる傾向があります。昼食後の休み時間、5時間目の体育の時間、サッカーなどの運動系の部活の時間におきやすく、発症は食後2時間以内の運動負荷の場合が大部分です。発症時の運動は負荷量の大きい種目が多いようです。

 中には、食事の後の入浴後や飲酒の後に発症したり、運動後の食事摂取で発症した例もあります。

 

発症時の食事内容の詳細な聴取が重要

 問診とアレルギー検査から原因食物を絞り込み、誘発試験を実施することが望ましいですが、誘発試験成功のためには、発症時の食事内容の詳細な聴取ならびに血液・皮膚検査結果からの原因食物の絞り込みが重要です。

 更に発症にはいくつかの増強因子が関与するため判断をさらに難しくさせますが、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬はこの増強因子の一つです。

 

症状は蕁麻疹や咳で始まり短時間でショックになることも

 症状は全身の蕁麻疹やむくみ、せき込み、呼吸困難などで始まり、進行が早く約半数は血圧が低下してショック症状をおこしいわゆるアナフィラキシーショックを呈します。従って病院へ救急搬送するなど迅速な対応が必要となります。またこの病気が疑われる場合には早めにアレルギー専門医を受診しましょう。

 

予防策は生活指導が主体

 発症の防止薬は未だ確立しておらず、運動前には原因食物を摂取しない、原因食物を摂取した場合には食後最低2時間は運動を避けるといった生活指導、更には感冒薬や解熱鎮痛薬を内服した場合は運動を避けることも必要です。

 また皮膚の違和感や蕁麻疹などの前駆症状が出現した段階で、運動を直ちに中止して休憩する、抗アレルギー薬、ステロイド、エピペンと呼ばれるアドレナリン自己注射器を携帯することも大切です。

 この病気と診断されたら、学校の先生などにもこの病気の特徴や原因食物、症状などを伝え、症状がおきた場合の対応も話し合っておくことが必要です。        

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