妊娠中や授乳中は絶対に薬を飲んではダメ?

#17. 妊娠中や授乳中は絶対に薬を飲んではダメ?

Q

よく妊娠中や授乳中には絶対に薬を飲んではダメと聞きますが、本当に全ての薬は極力飲まないようにしたほうがいいのでしょうか?

A

赤ちゃんへの影響と、薬を服用しなかったときの影響を比較して判断

 妊娠中や授乳中に服用する薬に関して、「赤ちゃんによくないから、薬は絶対服用しない」というのは誤った考え方です。赤ちゃんへの影響と、薬を服用しなかったときの影響を比較して、服用する場合のメリットが高いと考えられる時は、より安全な薬に変更可能であれば変更しつつ服用を続けることが原則です。例えば、喘息、てんかん、甲状腺機能異常、最近では、パニック障害などの場合です。治療上必要があって処方された薬に関しては自己判断で中止しないで、疾患の状況を考慮しながら担当医とよく相談して内服の変更、継続を検討することが大切です。

 

薬が原因の先天異常は約1%

 先天異常の多くは遺伝的要因と環境要因の兼ね合いと考えられていて、通常の出産の約2%に何らかの先天異常を伴うと言われていますが、詳細な原因はよく分かっていません。環境要因としては、妊娠時の感染症(風疹やトキソプラズマ症)、未治療の病気(糖尿病やてんかん等)、栄養不足(極端な偏食やダイエット)、アルコール、タバコ、食品添加物、環境汚染(ダイオキシン、水銀等)、そして薬があげられます。薬が原因の場合は、すべての先天異常の約1%と推測されていますから実際に薬の影響を受けている頻度は非常に少ないと考えられます。   

 

特に注意を要するのは器官形成期の妊娠4~11週

 特に注意を要するのは器官形成期と言われる妊娠4~11週で薬の服用を一番避けたい時期になります。ただし、催奇形性が証明されている薬は、サリドマイドやワルファリンなど多くはなく、これらの薬でも数日服用したからといって奇形になるというわけではありません。またこの時期には妊娠と気づかず風邪薬や頭痛薬を飲んでしまうこともよくありますが、市販薬を通常の量で数日間内服した程度ならまず問題にはなりません。妊娠8ヶ月~10ヶ月の後期には、新生児肺高血圧症を回避するためにも強力な鎮痛薬の長期連用は控えるべきです。 

 

授乳は通常の内服量では多くの薬でほとんど問題ない

 また授乳との関係では、母親が内服した薬の多くは確かに微量ですが母乳中へ移行しますが多くの薬では比較的短期間の通常の内服量であればほとんど問題は有りません。多くの薬の説明書に「授乳を中止」と書かれていますが、科学的な裏づけに乏しく今の時代にそぐわない点が指摘されています。薬の影響に過剰に心配するあまり、本来の母親の体調管理が不十分となって良好な哺乳や育児が出来なくなることにも十分な配慮が必要です。ただし乳児では薬物の分解等の代謝や、脳の感受性も大人とは異なりますので、薬剤の種類や服用量、服用期間によっては注意が必要な場合もあります。断乳が絶対に必要となるのは、母乳に移行し易い薬で、しかも重い副作用を起こすおそれのある一部の抗がん剤や免疫抑制薬、放射性医薬品などの薬です。やむを得ない場合は、一般的に母乳中の薬の濃度が最高になるのは2~3時間後ですから、薬の服用直前あるいは直後に授乳をすれば、赤ちゃんへの影響を少なくできるといわれています。

参考資料: 国立成育医療研究センターホームページおくすり110番ホームページ

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