“なまけ病”も実は本当の病気?

#33. “なまけ病”も実は本当の病気?

Q

 16歳の娘ですが中学の頃から「朝起きられない」、「お腹が空いて疲れやすい」、「集中力がない」、「忘れやすい」と言い出し、先日も高校の担任の先生から、授業中も「よく生あくびしている」、「昼食後よく寝ている」と注意を受けました。

 思春期の“なまけ病”と諦めていましたら、同様の症状で悩んでいた友人のお子さんが“低血糖の病気”だったと診断されたそうです。どのようなことでしょうか?

A

「反応性低血糖症」という意外と見落とされがちな疾患

 今回のような症状は不摂生をしている若者に有りがちで病気とは考えにくい側面もあります。また起立性低血圧や慢性疲労症候群あるいはうつ病などに診断されてしまうケースも考えられます。今回の“低血糖の病気”と診断するためにはこれらの疾患と類似した症状を呈する「反応性低血糖症」という意外と見落とされがちな疾患を念頭に置いておく必要があります。 

 

「反応性低血糖症」は血糖値が炭水化物摂取後に急激に上昇した後               異常に低下して症状をきたした状態

 「反応性低血糖症」は「機能性低血糖症」とも呼ばれ、血糖値が炭水化物摂取後に急激に上昇したのち異常に低下して自律神経系および中枢神経系の症状をきたした状態」を言います。 症状は(1)血糖値が低下した結果として生じる、発汗、動悸、頻脈、手指のふるえや顔面蒼白などの「自律神経症状」と(2)「中枢神経症状」である頭痛、視力障害、空腹感、眠気や生あくび、重症では意識障害や痙攣などに大きく二分されます。 

 

診断の決め手は「糖負荷検査」

 病因としては糖分の過剰摂取による膵臓機能の障害、大酒、脂質の過剰摂取、不規則な食事、ビタミン・ミネラルの摂取不足、ストレスなどが考えられます。 診断の決め手は、ブドウ糖を飲んでから5時間に渡って血中の糖とインスリンの値を測定する「糖負荷検査」です。糖を摂取した直後には、血糖値が急激に上昇しそれを追いかける形で、インスリンが過剰に分泌され、開始後3~4時間頃に血糖値は急激な下降を示します。このようなパターンは前述の境界型糖尿病の他に甲状腺機能亢進症でも呈することがあります。その他の検査値では総コレステロールや中性脂肪、アルブミン、カリウムの値の低下が参考となります。 

 

治療法は糖質制限主体の食事療法

 治療法としての特効薬は今のところ無く、食事療法が主体となります。意識消失をきたすような重症の低血糖の場合には緊急で糖の投与が必要ですが、それ以外ではできるだけ糖質制限を行います。反応性低血糖症の原因が、炭水化物摂取後の急激な血糖値上昇ですので、「炭水化物を一気に摂取しない」ことが重要になります。最初に食物繊維を摂ることで炭水化物の消化吸収が穏やかになり、また炭水化物は最後に食べる、減らした炭水化物の分はたんぱく質で補う、ゆっくり食べる、こうした工夫で血糖値の急激な上昇を抑えることが出来、結果として低血糖も予防可能となります。また低血糖となり易い時間に血糖値が上がりにくいナッツ類や無糖のヨーグルトなどで補食することも有効でしょう。

 

相談は内科(内分泌内科)へ

 摂生しても改善しない“なまけ病”は一度内科(内分泌内科)にご相談されることをお勧めします。

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