ボクサーはパーキンソン病になり易いの? |
#28. ボクサーはパーキンソン病になり易いの?
Q |
19歳の次男が今春から大学でボクシング部に入っています。先頃亡くなった元・世界ヘビー級チャンピオンのモハメド・アリさんはボクシングが原因でパーキンソン病になったと聞きとても心配です。大丈夫でしょうか? |
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A |
パンチドランカーとは頭部に繰り返し強い衝撃を受けている人がわずらう 慢性外傷性脳症ボクサーのように頭部に繰り返し強い衝撃を受けている人には何年か後にパンチドランカーと呼ばれる脳の障害が出やすいと以前から言われていました。パンチドランカー(パンチ酩酊者)とは最初に見つかった方がボクサーだったことから付いた名称で、酔っ払いのように手が振るえたり、ふらついたりする症状からそのように呼ばれました。慢性ボクサー脳症、外傷性ボクサー脳症とも言われたりしますが、ボクサーだけでなくアメリカンフットボールやアイスホッケー、プロレスなど繰り返し頭部へ衝撃を受けることのあるアスリートにも発症することが判っていて、最近では慢性外傷性脳症と呼ばれることが一般的です。
特にボクサーでは多く約20%が患っているボクシングの場合始めてから平均15年後ぐらいに発症する選手が多く、ボクサーの約20%が患っているとも言われています。2005年ごろから本格的な研究が始まったところで詳しいことはまだ判明していませんが、ボクシングは他の格闘技と比べて頭部へダメージが集中するためパンチドランカーに陥り易いとされています。
症状は初期には頭痛、感情の変動、記憶障害、進行すると認知症や パーキンソン症候群症状は初期には頭痛、感情の変動(うつ、攻撃性、怒り等)や短期記憶の障害等で、進行すると認知症やパーキンソン病を発症してきます。パーキンソン病は正確にはパーキンソン症候群で、今回のような脳へのダメージ等の他の要因からパーキンソン病様の症状を呈する一連の病気の仲間をパーキンソン症候群と呼びます。パーキンソン病では手足や顔のリズミカルな振るえ、筋肉の硬直からくる顔の表情の乏しさ(仮面様顔貌)や最初の一歩が踏み出せなくなる歩行困難や動作の緩慢、バランスと姿勢の保持の困難さと前かがみの姿勢といった症状が特徴的です。これらの症状が悪化すると社会生活だけでなく、日常の生活でさえ著しく困難となります。
神経症状の観察や定期的な脳の検査が必要予防法としては注意深く神経症状の変化を観察することや、定期的な脳のCTやMRI等の検査で脳室の拡大や白質のび慢性萎縮の兆候が無いか確認していくことで早期の対応が可能となります。近年では多くの格闘技団体で試合前後の脳の検査を義務付けています。 ディフェンス能力を高めたり、ヘッドギアの着用にも十分な配慮が必要ですし、キャリアの長さ、競技の激しさも考慮した引退の時期の決定も大切なことと考えられます。 |
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