『自律神経失調症』は俗称?

#47. 『自律神経失調症』は俗称?

Q

私の母は長年季節の変わり目に体調を崩し、自律神経失調症と診断を受けてきました。

ところが先日知人の医師からこの病名は正式な医学病名ではないといわれ大変驚きました。

本当でしょうか?

A

自律神経とは、内外からの情報や刺激に対して、自動的に反応する神経 

 自律神経とは、内外からの情報や刺激に対して、自動的に反応する神経で、本人の意志とは関係なく、呼吸・血液循環・体温調節・消化・排泄・生殖・免疫などの機能を無意識のうちに調節している、生命維持に不可欠な神経です。

 そして自律神経は交感神経副交感神経という二つの神経からなっていて、交感神経は「活動する神経」、「闘争と逃走の神経」などとも呼ばれ脈拍や呼吸数の増加、体温の上昇などの反応を引き起こし、身体を予想される激しい活動に備えた状態にします。

 他方、副交感神経は「休む神経」といわれ、睡眠や休息を行う時に活性化し、脈拍や呼吸数の低下、身体の弛緩など身体をリラックスさせ休息に適した状態にするように働き、睡眠や安静に必須です。

 

「自律神経失調症」は交感神経と副交感神経のバランスが乱れた状態

 これらの交感神経と副交感神経の働きがバランスを保って自律神経として体内の環境を整えているのですが、不規則な生活習慣や過度のストレスなどにより、この絶妙なバランスが乱れてしまうと、身体的には頭痛・耳鳴り・めまい・疲れ・動悸・息切れ・しびれ・吐き気・下痢・便秘・微熱・発汗・ほてり等、  また精神的には不安・恐怖・意欲や集中力の低下・感情の起伏等といった様々な不調・症状が単独あるいは複数重なって現れます。この状態をいわゆる「自律神経失調症」といいます。

 

自律神経の中枢は感情の中枢とも連携している 

 自律神経の中枢は脳の視床下部にあってこの場所は感情の中枢とされる辺縁系と連携していることから、精神的要因とも密接な関係があると考えられています。

 

「自律神経失調症」という病名は「神経症やうつ病等に付随する各種症状を総称したもの」

 「自律神経失調症」という病名は一般でも広く使われていますが、実は曖昧に使用されることが多い 診断名で、現在も医学界では独立した病気として認めていない医師も少なくありません。

 どうやら疾患名ではなく「神経症やうつ病等に付随する各種症状を総称したもの」というのが一般的な国際的理解のようです。

 

「自律神経失調症」の背後に潜んでいる疾患を見極めることが大切、安易な乱用は慎むべき

 「自律神経失調症」を引き起こす疾患としては、うつ病や神経症の他にも全般性不安障害、パニック障害、適応障害といった精神疾患や、慢性疲労症候群、摂食障害、慢性疼痛等様々な疾患が挙げられます。従って「自律神経失調症」の背後にどのような疾患が潜んでいるのかしっかりと見極めてそれに適した治療を行っていくことが大切となります。

 そのような真の原因疾患が明らかに出来ない状況では、やむを得ず暫定的に「自律神経失調症」という診断名を付けることとなります。従って検索過程での使用はともかくとして、最終診断として安易にこの診断名を乱用することは慎むべきと言えます。

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