はしかの流行の原因は?

#30. はしかの流行の原因は?

Q

関西を中心にはしかが流行しているそうですが、予防接種が普及した現在の日本でどうしてですか?

A

はしか(麻疹)とは

 麻疹ウイルスによる急性のウイルス感染症のことで、潜伏期が約10日間、発熱・咳・鼻水などかぜに似た初期症状(カタル期)があり、その後高熱が出て、顔・首・全身に発疹が現れます(発疹期)。問題となるのは約3割に起こると言われる合併症で、中耳炎、気管支炎、角膜炎やクループ症候群(喉が炎症で腫れ気道が狭くなる)に加えて、麻疹の死亡率0.1~0.2%の主要因である肺炎や脳炎には特に注意が必要です。 

はしかは子供の病気?

 はしかはもともと、子供に多い病気ですが、今回の流行で目立つのが成人麻疹(15歳以上)です。近年では国内で2001年、2007年、2008年にも流行がありました。今回は今年8月に関西国際空港経由で来日した19歳の男性がアジアで流行中の『D8型』と呼ばれるタイプの麻疹ウイルスを持ち込み、多数の人に感染を広げてしまったということです。

予防接種が普及している今日このように広がってしまった原因は? 

感染拡大の主な原因は2つあります。まず1番目は、ワクチン接種回数が関係しています。以前は、麻疹ワクチンと風疹ワクチンは別々で、しかも1回のみでしたが2006年からは、混合ワクチンであるMRワクチンを第1期(生後1歳~2歳)、第2期(5~7歳)の合計2回接種に強化されています。この移行期には中学1年生と高校3年生に追加接種が実施されましたが、この接種率があまり高くなかったこと、さらに20代後半の人は1回のみしか接種していない可能性が高いことが関与していると思われます。

 2番目の理由としては麻疹ウイルスの感染力の強さです。1人の麻疹感染者が周囲に感染させる人数は12人から18人と多く、感染しやすいインフルエンザの場合の2~3人と比較しても、いかに麻疹の感染力が強いかがわかります。これは麻疹ウイルスが接触・飛沫だけでなく空気感染するという特徴が関与しています。距離に関係なく同じ部屋にいただけで感染してしまう可能性があるわけです。

麻疹の有効な予防法は?

 このように感染力の強い麻疹の感染予防には、予防接種による集団免疫(ウイルスに暴露しても感染しないだけの十分な抗体を持っていること)が最も重要です。 麻疹の場合、90~95%の人が麻疹に対する免疫を備えていれば流行を防ぐことが可能であると言われています。現在MRワクチンの第1期の接種率は95%以上、第2期の接種率も90%以上です。日本は3年間、日本特有の麻疹は撲滅され輸入される麻疹のみになっていましたので、2015年3月にWHOから麻疹の『排除状態』であると認定されました。

 ただし、接種を受けた人でも、10年程経つと抗体価が低下して発症するケースもありますので、周囲に患者がいる場合などは、再接種がお勧めです。

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