インフルエンザワクチンについて

#14. インフルエンザワクチンについて

Q

20歳女性、インフルエンザワクチンを打ってもインフルエンザにかかることがあるようですが、予防効果はどの程度期待できるのでしょうか?

A

インフルエンザは高熱と強力な感染力が特徴で、免疫力の弱い人では重篤となり易い

 インフルエンザ(流行性感冒)はかぜ(普通感冒)と違って39℃前後の高熱をはじめとしてより重篤な症状をきたすと共に、強力な感染力を示します。また高齢者の肺炎や小児の脳症などの合併症は重症化する危険もあり注意が必要です。

 

日本におけるインフルエンザの流行・拡大は、小学校で始まる

 インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型の3種類ありますが特にA型、B型は感染力が強く大きな流行を起こします。小学生は罹患率が高くしかもウイルスを大量に出しますので、日本におけるインフルエンザの流行・拡大は、小学校で始まると考えられています。 

 

インフルエンザが毎年流行るのは遺伝子の突然変異による

 インフルエンザが毎年流行るのは遺伝子の突然変異によってウィルスの表面の突起の構造がわずかに変化し免疫の監視機構をすり抜けてしまうためです。そしてこの変化が大きいほど、感染を受けやすくなり症状も強くなります。この変異(連続抗原変異)によって、インフルエンザは毎年流行し続けることができ、また流行するウイルスの型が年によって変わってきます。

 

新型インフルエンザは遺伝子の組替えによって起こり大流行をきたす

 他方A型インフルエンザウィルスは、数年から数十年単位で、流行株が突然別の亜型に変異(不連続抗原変異)することがあり、これが新型インフルエンザウィルスの登場になります。ヒトはこのウイルスに感染したことがないので誰も抗体をもっておらず、新型インフルエンザは瞬時に世界中に広がり、大流行(パンデミック)になると考えられます。20世紀に大流行した3種のウイルスも新型ウイルスです。不連続抗原変異は、突然変異でなく遺伝子の組替えによって起こります。 

 

ワクチンの効果は健常人の発症を70~90%予防し、高齢者の死亡を80%減らす

 ワクチンについてはその年に流行しそうな3種類の株の決定がほとんどの国でWHO(世界保健機関)の推奨株に基づいてなされています。健康な成人のインフルエンザに対する発症予防効果は70~90%と高く、また高齢者では発病を約45%、死亡を約80%減らす効果が報告されています。従って罹患率の高い小児、死亡数の多い高齢者、あるいは医療従事者等は、毎年インフルエンザワクチンを接種することが望まれます。ただしウイルスの突然変異により効果が低下し感染してしまう可能性もありますが、近年は予測技術も高まって実際の流行とほぼ一致しています。インフルエンザワクチンは病原性をなくした不活化ワクチンですので、妊婦や授乳婦にも積極的に接種が勧められています。

 

新型インフルエンザのワクチンは、発生してから製造するため6ヵ月以上かかる

 ただし新型インフルエンザに有効なワクチンは、新型インフルエンザが発生してからでないと製造できませんし、製造には少なくとも6ヵ月間かかると言われています。またトリインフルエンザの流行時にヒトウイルスのワクチンが接種されるのは、トリインフルエンザとヒトインフルエンザを区別するため、そして、ヒトウイルスとトリウイルスに同時に感染して、ヒトの体内で遺伝子交換によって新型インフルエンザウイルスが誕生するのを防ぐ意味もあります。

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