ヒートショックにご注意!

#37. ヒートショックにご注意!

Q

先日親戚の叔父が入浴中に突然亡くなりました。以前にも知り合いの方が風呂場で突然死されたことがありましたのでその多さに驚いています。なぜ入浴時はこのように急に体調に異変が起きるのでしょうか?

A

ヒートショックに因る死者は何と交通事故死の4倍

 入浴時の体調の急変については以前から『ヒートショック』という言葉で注意喚起されてきました。ヒートショックとは急激な温度変化による血圧の急変動が身体に及ぼす衝撃のことで、全国でなんと年間19,000もの人が関連した入浴中の急死であると推計されています。この数は交通事故死者数の4倍を超えています。そのうちの大多数が高齢者で、入浴中の溺死、失神からの転倒による死亡例もあるようです。また事故の5割が122月の寒い時期に発生していることから気温との相関が指摘されています。さらに家庭内で死亡する高齢者の4分の1はヒートショック死とも言われ、その数は10年間で約7割も増加をしていることから、高齢化社会を反映しているとも言えます。

 

急激な体温変動が循環動態に影響する

 温度変化が急激すぎると血圧が大きく変動して循環動態が不安定となり、心筋梗塞・脳梗塞・脳出血・不整脈等の心臓・脳血管系の疾患による突然死のリスクが高くなります。  

特に65歳以上の高齢者、高血圧、糖尿病、高脂血症などの動脈硬化性疾患の基盤がある人、不整脈の人がハイリスクと考えられます。動脈硬化が進行していると血圧の変動が大きくなりますし、血圧の変動は脈拍の変動にもつながり不整脈悪化の誘引ともなります。

 

日本は諸外国と比べて入浴中の死者数が多い

 古い家屋や断熱性の低い建物では脱衣場と浴室の温度差は夏場(2538℃=13℃)に比べて冬場(1042℃=32℃)に拡大します。特に日本は諸外国と比べて入浴中の死者数が多いと言われています。背景として浴室暖房設備の普及率がドイツやイタリアの90%台に対し、日本はわずか20%台と低い点が指摘されてもいます。

 

予防策は脱衣場や風呂場の暖房

 予防策としては、脱衣場や風呂場にファンヒーター等の暖房器具を使用したり、2番風呂以降の入浴が勧められています(温度のバリアフリー化)。また熱いお湯は入浴時とその後の血圧の変動が危険性を高めてしまいますので3840ぬるめの湯の方が望ましいです。また入浴中は体が温められ血管が弛緩して血圧が低下していますので、急に立ち上がると脳の血流が低下してめまいや失神を起こすおそれがあります。さらに飲酒後は血圧が下がることが知られていますので、飲酒後の入浴には注意が必要と考えられます。古い家屋にお住まいの独居あるいは老々介護のご家庭では特にお気をつけいただきたいと思います。

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