成人はBCGを接種してはダメ?

#44. 成人はBCGを接種してはダメ? 

Q

 最近私は風疹や麻疹(はしか)の免疫が不十分だからワクチンの追加接種を勧められました。        一方高齢の母が入所している介護施設では結核の患者さんが見つかりましたが、結核の場合はツベルクリン反応が陰性であればやはり予防のためにワクチン(BCG)を接種したほうがいいのでしょうか?

A

結核は古くて新しい病気

 結核は、結核菌によって人から人に広がる慢性感染症で、明治時代から昭和20年代までの永い間  『国民病』、『亡国病』と恐れられ、50年前までは年間死亡者数も10数万人に及び死亡原因の第1位でした。

 戦後は特効薬である抗結核薬の開発や生活水準の向上により、薬を飲めば完治できる時代になりましたが、1996年以降結核患者の発生件数、罹患率が増加に転じて再び注目を浴びるようになった  【古くて新しい病気】なのです。

 

残念ながら日本は「結核中進国」

 現代の世界では、総人口の約3分の1が既に結核に感染して、結核は世界の死亡原因トップ10の1つとなっています。2015年には1,040万人が新たに結核を発病し、180万人が亡くなりましたが、患者さんが多いのは発展途上国です。

 ところで2016年の日本の罹患率は人口10万人あたり13.9で他の先進諸国の数倍の高さであるため、残念ながら日本は「結核中進国」と位置づけられています。

 

結核にかかりやすいのは乳幼児や免疫力の低下している人

 感染のリスクでは、免疫力の弱い乳幼児やエイズ患者、また免疫抑制のかかるような治療(ステロイドホルモン、抗癌剤、免疫抑制剤等)を受けている人、糖尿病や胃の切除を受けた人、さらにはストレスや不規則な生活、極度な過労も発病や重症化しやすい要因となります。

 

BCGの目的は乳幼児の結核を予防すること

 結核の予防接種であるBCGは、結核菌の感染を受けていない人に結核菌の弱毒菌を接種して、結核に対する免疫をつけるワクチンですが、有効期間は約15年ほどです。

 国際的にはBCGは「重症結核に高い有効性が認められ、肺結核では50%発症率をさげている」と評価されています。

 わが国では2005年4月からは対象年齢が生後6カ月までに限定され事前のツベルクリン反応なしで実施することとなりました。

 従ってBCGの目的は、乳幼児の結核を予防することにあります。日本は結核の中蔓延国で、特に大都市では東南アジア並みの罹患率ですからBCG接種をやめるわけにはいきません。

 

成人へのBCG接種は結核の予防効果なし!

 ただし注意したい点は、青年や成人にBCGを打っても、肺結核の感染を予防する効果は認められていませんから不必要なのです。成人では、接種部位のケロイドのリスクも高まるし、いわゆる疑陽性での接種は局所反応が強くなりますので接種しません。

 先進国においても一律接種方式、選択的接種方式の違いがあり、各国でBCG接種のポリシーが異なります。定期予防接種はフランス、インド、ロシア、日本、韓国などで、ハイリスク群にのみ予防接種はドイツ、オランダ、スウェーデンなど、定期予防接種としては実施せず(任意接種)はアメリカ合衆国などです。

 

結核患者さんが発生したら

 結核患者さんの発生に際しては、初発の患者さんや接触者の人達のリスクを評価し、胸部レントゲンや血液検査等を実施し、感染の疑われる場合は発病予防薬の内服を行い感染の拡大を防ぎます。

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