新型コロナの内服治療薬は有効なの?

#54. 新型コロナの内服治療薬は有効なの?

Q

  46歳の救命救急士です。新型コロナのオミクロン株に因る第6波もようやくピークを過ぎつつあるもののまだまだ遷延化しています(3月5日現在)。  そうした中、日々の業務では発熱患者さんと接する機会が多く依然として感染の恐れと隣り合わせの状況です。   そんな我々にとっても最近相次いで承認された新型コロナの内服治療薬は心強い援軍に思えますが、実際どの程度有効なのでしょうか?

A

 未だ予断を許さないオミクロン株による感染第6波

 我が国でも昨年末から急拡大した新型コロナ感染の第6波は、従来株以上の強力な感染力を持つオミクロン株に因るものですが、当初の若い世代中心の感染から、その後高齢者と子どもに広がっていき、まだくすぶっています。

 その感染致死率は20歳以下では季節性インフルエンザ以下ですが、60歳以上においては季節性インフルエンザの1.9~2.3倍であり、高齢者は重症化し易いため依然として医療ひっ迫要因のひとつともなっています。

 

 有効な内服薬が2剤承認され実用化

 そうした中、軽症から中等症の患者が服用できる重症化予防薬が実用化されたことは大変明るいニュースです。

 わが国で経口薬として初めて承認された米メルク社のモルヌピラビル(ラゲブリオ)は、入院・重症化予防効果が30%、また2/10に国内の2剤目として特例承認されたばかりのファイザー製経口治療薬「パクスロビド(パキロビッド)」は、死亡リスクを89%減少させる特効薬です。

 

対象は重症化リスクを有する人でポイントは早期に内服開始すること

 対象者は前者では18歳以上、後者は12歳以上で、いずれも体内でのウイルスの増殖を抑えて重症化を予防する薬ですから、高齢、慢性閉塞性肺疾患、男性、糖尿病、悪性腫瘍等の重症化リスクを特に複数有する人においては感染が確認されたらなるべく早く、症状が出た場合は5日以内に内服開始が必要です。

 

ファイザー製のパクスロビドは併用禁忌の常用薬に要注意

 ファイザー製のパクスロビドは2種類の薬を組み合わせて飲むことになっていて、このうち、抗ウイルス薬の効果を増強させる作用がある「リトナビル」には薬の血中濃度を上げる作用があるため、降圧剤、高脂血症薬、抗凝固薬などの38成分が併用禁忌とされています。

 使用に当たっては併用禁忌の薬を中断する必要があり、基礎疾患があって別の薬を飲んでいる人は服用に際して医師に相談する等の慎重な判断を要します。

 

期待の国産の新薬は有望な使いやすい3剤目として承認申請中

 一方、期待の国産の塩野義製薬の新薬は臨床試験では内服3日後に9割の患者からウイルスが検出されず、軽症から中等症の患者の重症化予防が期待できるため2月25日に3剤目として承認申請しています。

 前者の2剤と同様体内でのウイルスの増殖を抑えますが、低リスク者も含めて臨床試験を行っているため、12歳以上や重症化リスクがない人などにも投与可能である点、また国産であるため豊富な供給が期待できる点も魅力です。

 

感染初期に内服することで重症化や感染拡大の予防に大いに期待

 こうした内服治療薬はワクチンや重症化予防薬として使用される抗体薬よりもウイルスに対する耐性が起きにくい為、感染初期に内服治療することで重症化や感染拡大の予防に効果を発揮してくれるものと大いに期待されます。

 新型コロナと共存できる日もさほど遠くないことを予感させてくれます。

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