新型コロナウイルス感染の行方は?

#50. 新型コロナウイルス感染の行方は?

Q

 現時点(5月15日)で国内では約16200人、世界では約440万人以上の方が感染し、30万人以上が亡くなっている今回の新型コロナウイルス感染は、東京オリンピックを延期に追い込み、社会を混乱させ世界経済に大打撃を与えています。最終的な結末はどうなるのでしょうか?

A

歴史的には人類の最大の敵は感染症だった

 半年前には予想だにしなかった今回の新型コロナウイルス騒ぎですが、最終的な結末を予測するにはまだ情報が少なくて困難です。ただ、これまで人類を脅かしてきた感染症の世界的大流行(パンデミック)を振り返ることはある程度参考となります。 

 人類は紀元前から様々な感染症と戦ってきましたが、実は人類が最も多く犠牲となってきたのは戦争ではなく圧倒的に感染症なのです。 

 原因も治療も十分に確立されていなかった時代には何千万人という死者をだしていた天然痘は周期的に流行していましたし、14世紀にヨーロッパで黒死病と恐れられたペストでは、ユーロッパだけで全人口の1/4から1/3に当たる2500万人が死亡したと言われています。 

 

第一次世界大戦をも終結させたスペインかぜ

 今回も含めた新型インフルエンザにおいては、第一次世界大戦中に大流行したスペインかぜが突出していて、遺伝子の変異を伴うことで1シーズンに全世界で3回も流行し、患者数は世界人口の約1/3、死者は健康な若年者層中心に全世界で4000万人、一説では1億人とも言われています。

 その数字は第一次世界大戦の死者1000万人をはるかに超え、結果的に戦争を終結に向かわせました。現在の世界人口換算では何と1億7000万人の死者となります。 

 

新型インフルエンザは依然として繰り返し流行

 その後医療の進歩により犠牲者数は格段に減少したものの、1957年のアジアかぜでは200万人以上、1968年の香港かぜでは100万人以上、近いところでは2009年の新型インフルエンザでは約1万5千人が世界中で亡くなりました。ちなみに現在でも毎年世界中で結核では400万人、マラリアでは100~200万人が犠牲となっています。 

 

基本戦略は行動変容による医療崩壊の回避

 今回の新型コロナウイルスは接触・飛沫感染ですが伝染性が高く、また不顕性や軽症患者が多いことが特徴です。現在世界中が目指している基本的戦略は、市民の行動変容密閉空間・密集場所・密接場所を避ける、咳エチケットと手洗い・消毒の徹底)、クラスターと呼ばれる集団発生の早期発見・対応によって感染拡大のスピードを抑え、爆発的流行を封じ込めることで医療崩壊を防ぎ、重症者の早期診断と適切な集中治療の体制を確保しつつ、その間に治療法やワクチンの完成を待つというものです。 

 

 ウイルスが変異して暴走する前に治療法の確立とワクチン開発が望まれる

 幸い今のところ国内ではパンデミックを来すことなくコントロールされ、昨日39県の緊急事態宣言が解除されたところです。しかし現在のペースでは集団免疫が獲得され収束するまでには数年以上かかると推定され、それまでは何度か流行の波が現れると考えられます。

 今後ウイルスが変異して更に悪性度の高い株に化けないうちに、簡易な診断キットと的確な治療法ならびに有効なワクチンが開発され、この戦いに終止符を打つ日が1日も早く来ることを切に願うばかりです。

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