禁煙後もタバコを吸いたいと思うのは心の問題?

#16. 禁煙後もタバコを吸いたいと思うのは心の問題?

Q

半年前にチャンピックスの内服治療で禁煙に成功しました。ニコチン依存症は克服しているはずだと思うのですが、いまだにたまにタバコが吸いたいと思ってしまいます。これは心が弱いためなのでしょうか、また今後どのようにしていけば良いのでしょうか?

A

タバコを止められないのは薬物的依存症と心理的依存症に因る 

 タバコの依存症(ニコチン依存症)には2つの依存症があると言われています。ひとつはタバコの主成分であるニコチンに対する薬物的依存症で、ニコチンが大脳の快楽中枢に作用することで引き起こす身体的依存症いわゆるニコチン中毒です。タバコが切れるとイライラしたり落ち着かないというのもこれに因るものです。もうひとつは心理的依存症で、仕事の区切りの一服などいつも喫煙していた場面あるいは他人の喫煙シーン、困難に遭遇した状況などにおこなってきた喫煙のいい思い出の積み重ねが心理的条件反射を形成してしまうためのものです。そしてこれは経験や記憶に依るところが大きく、喫煙年数が長いほど強固となります。前述のニコチンの禁断症状とは異なり生活習慣の一部となっていたものが満たされない物足りなさ、口寂しさといった感覚を引き起こします。これらの二種類の依存症のためにタバコはなかなか止められないと考えられます。

 

喫煙習慣を続けたくない人は6割以上

 実際厚生労働省の調査によれば、喫煙男性の4人に1人、女性の3人に1人が「タバコをやめたい」と考え、「本数を減らしたい」を含むと、喫煙習慣を続けたくないと考えている人は6割を超えています。また、喫煙者の半数以上が45回禁煙を試みたことがあるとのことです。

 

チャンピックスでニコチンの禁断症状に悩まされること無く楽々禁煙

 このような依存症から脱却する方法として、従来からニコチンガムやニコチンパッチといったニコチン自体を持続的に補充する方法がありましたが、最近はニコチンとよく似た構造の物質の禁煙補助内服薬(チャンピックス)が広く世界中で使用されています。この薬を使用することでニコチンの禁断症状に悩まされること無く7割の方が完全禁煙に成功すると言われています。

 

心理的依存症克服には意思の力が必要 

 しかしこれらは前述の心理的依存症に対しては効果が有りませんので自分の意思の力で克服していく必要があります。ところが長年の習慣で体にしみ込んでいる心理的依存症は手強くて、禁煙後何ヶ月も経過してからも様々なストレス場面において呼び起こされて喫煙が再発するケースも少なく有りません。従って禁煙を維持していくためには心理的依存症への長期間の支援プログラムの充実が今後は期待されます。今回のケースでも心理的依存症からの脱却は未だ完了していない可能性が伺われますので、慎重な対応が望まれます。担当医に再度心理的サポートを依頼するのもひとつの選択肢かと思います。

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