認知症の早期の診断・予防法は? |
#24. 認知症の早期の診断・予防法は?
Q |
56歳女性、最近テレビを観ていても俳優の名前がなかなか思い出せなくて認知症が心配です。実の母親が10年ほど前にアルツハイマー病で亡くなっています。何か早期に予防できる手だては有りますでしょうか? |
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A |
増えつつある認知症このコーナーでも以前に(#21)認知症と物忘れについて述べましたが、超高齢化社会を迎えるわが国において認知症は深刻な問題です。要介護高齢者の半数は認知症であり介護施設入所者の約8割は認知症を伴っていると言われています。特効薬が未だ無い現状では出来るだけ早期に診断し、進行を遅らせる治療薬等で可能な限り健康寿命を永らえることが最善の対処法と言えます。そのためには様々な診断法を駆使して、もし兆候が疑われればより高度な精密検査を受けるというステップが望ましいでしょう。
認知症の症状は認知症の症状は中核症状と周辺症状の大きく2つに分けられます。前者は(1)記憶障害、(2)見当識障害(時間や場所などの基本的な状況の把握が出来なくなること)、(3)理解・判断力の障害、(4)実行機能障害(柔軟な行動が困難となる)、(5)感情表現の障害 を含みます。後者の周辺症状は行動・心理症状(BPSD)とも呼ばれ、認知症に伴って現れる行動と心理両者にまたがる症状で、本人の性格や周囲の環境等様々な要因が絡みます。具体的には不安、うつ、幻覚、妄想、徘徊、暴力等を含みます。
早期の認知症をとらえる評価法はこうした症状をふまえたうえで早期の認知症をとらえる評価法としては、まず手軽な長谷川式簡易知能評価スケールやミニメンタルステート検査(MMSE)といった問診票形式が有効です。また初期認知症兆候観察リスト(OLD)も周囲の人が評価するうえで参考となります。しかしながら実際認知症と診断される6~7年前から軽度認知障害(MCI)が出始めるとも言われています。また認知症の約7割を占めるアルツハイマー型認知症では発症の約20年も前からアミロイドβという原因蛋白質が脳内に溜まり始め、約10年前から記憶を司る海馬が萎縮し、5年ほど前から脳の糖代謝の低下や最近の出来事の記憶力低下が認められると報告されています。そうした中で認知症関連の血液検査として最近注目されているひとつがMCIスクリーニング検査で、アミロイドβの血液への排出に働く3種類の蛋白質の血中濃度を測定することによってMCIの兆候を早期に検出する方法です。またAPOE遺伝子検査はアルツハイマー型認知症の発症リスクに関係するAPOE遺伝子のサブタイプε(イプシロン)4型の有無を確認する検査です。
MCIは認知症の前段階MCIは認知症の前段階であり、5年ほどで約半数が認知症に移行すると言われています。MCIが疑われたら、神経内科の物忘れ外来を受診したり、日常生活での有酸素運動、生活習慣病予防を心がけた食生活、脳に刺激を与えるような活動的な生活にも留意したいところです。 |
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