貧血治療の注意点

#1. 貧血治療の注意点

Q

43歳女性、 3年前婦人科で子宮筋腫を指摘されましたが生理も特に多くないためその後は経過観察していません。毎年の会社の健診で軽度貧血を指摘されていて食生活に注意してきましたが、年々徐々に増悪して先月のデータではHb9.8g/dl(正常値12.0-16.0)となり要精査・治療の報告書をいただきました。これまでのような食事療法だけではいけないでしょうか。

A

 貧血とは酸素を結合し運搬するヘモグロビンが減少した状態

 赤血球は血液の主要な成分であり全身に酸素を運ぶ大切な働きをしています。そして貧血とはこの赤血球に含まれていて酸素と結合し運搬するヘモグロビン(ヘムという赤い色素とグロビンというタンパク質からできている複合タンパク質)が減少した状態を言います。

 

貧血の様々な症状は酸素運搬能力の低下に因る症状

 特に生理によって毎月血液を失う女性は約10%に貧血があるとも言われています。貧血の方の顔色が青白いのも赤い成分であるヘモグロビンが低下しているためですし、労作時の息切れ、動悸、倦怠感、疲れやすさ、立ちくらみ、頭痛、筋肉痛(こむら返り)といった貧血の様々な症状もヘモグロビンの低下に由来する酸素運搬能力の低下を念頭に置くと理解しやすくなります。

 もっとも月単位、年単位でゆっくり進行して来た貧血の場合はある程度順応してしまうため、重症な貧血でも安静時には症状が出にくく平気な方も少なくありません。しかしながら階段を登ったり、早歩きをしたりして酸素消費量が増すととたんに前述の酸素不足の症状が顕著に現れます。

 

貧血のみならず背景に潜む他の疾患の治療まで行う事が大切

 貧血を認めた場合に大切なことは貧血全体の約7割を占める鉄欠乏性貧血を想定してすぐに鉄剤の内服を開始してしまうのではなく、まず原因をしっかり調べることです。その原因によって治療法も異なりますし、その原因の背景に潜む他の疾患の治療まで行う事が大切です。もし鉄分の低下が認められたならば体内から失われた原因として慢性的な出血(胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がん、大腸がんなどの消化管の疾患や子宮筋腫あるいは血尿などにより継続的に少しずつ出血していること)、偏食等の食生活の問題、吸収の問題やまれには慢性的な体内での溶血(赤血球が壊れること)等が考えられます。

 特に生理のない成人男性や閉経後の女性が鉄欠乏性貧血になった場合は、何らかの病気によって出血が起きている可能性が高く、速やかに精密検査を受けられることをお勧めします。

 また鉄分の低下がないのであれば、他のタイプの貧血を想定して更に検索を進めるべきでしょう。

 今回のケースでも便潜血の確認検査や婦人科での子宮筋腫の経過観察は是非とも行っておきたいところですし、血液検査で鉄欠乏の有無の確認も必須です。

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