たばこで腫瘍マーカーが上昇する? |
#5. たばこで腫瘍マーカーが上昇する?
Q |
53歳男性、20歳から1日30本以上のヘビースモーカーですが、今回の健康診断でCEAが10.2 ng/ml(基準値5.0以下)、一昨年は8.3でした。腫瘍マーカーが上昇傾向ですので癌が心配で精密検査を受けようと思いましたが、友人に喫煙者はCEAが上がりやすいから心配ないと言われました。本当でしょうか? |
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A |
CEAは癌以外でも上昇する腫瘍マーカーとは、癌の進行とともに増加する生体因子のことで、50種類以上が臨床で活用されています。 CEAはその代表的なひとつで、胃や大腸などの消化器の癌以外にも肺、膀胱、前立腺、卵巣、乳などの癌でも高値となる場合がある一方、早期の癌では上昇し難く、また進行期でも上昇しない場合もあります。更に喫煙の他に肺気腫、肝炎、肝硬変、膵炎、大腸炎、乳腺症、腎不全等の良性疾患でも上昇し得る検査です。
長期喫煙者では喫煙量に比例して正常の2倍位まで上昇特に長期喫煙者では喫煙量に比例して正常の2倍位まで上昇することもあるので注意が必要です。従ってCEAも診断の補助、癌の治療経過のモニターとして使用される指標のひとつとご理解いただいたほうがよろしいでしょう。
毎年世界で300万人が喫煙が原因の癌や心臓病で死亡ところで毎年世界で300万人が喫煙が原因とみられる癌や心臓病で亡くなっていて、2030年代初頭には年間1000万人に達するとWHOは警告しています。喫煙者は、肺癌、脳卒中、脳梗塞、心筋梗塞、慢性閉塞性肺疾患、胃・十二指腸潰瘍の他に不妊症等にも罹患しやすいことが疫学的に示されています。
喫煙は癌の原因の中で予防可能な最大の原因悪性腫瘍では肺癌のほか鼻腔、口腔、咽頭、胃、肝臓、子宮頚部、腎臓の癌も増加します。日本人では癌の死亡のうち男性で40%(肺癌では70%)、女性で5%(肺癌では20%)は喫煙が原因と考えられています。また日本人では癌で死亡するリスクが喫煙者では男性で2倍(肺癌、喉頭癌、尿路癌では約5倍)、女性で1.6倍(肺癌で4倍、子宮頚癌、口腔・咽頭癌で2倍以上)です。従って喫煙は癌の原因の中で予防可能な最大の原因であると言えます。実際禁煙してからの期間が長いほど癌のリスクも低下していきます。特に子宮頚癌では、非喫煙者のレベルまで急速に下がり続け、喉頭癌では10~15年でリスクが約60%低下すると言われています。
受動喫煙で肺癌の危険性は20~30%上昇一方多くの疾患で受動喫煙との因果関係が示唆されていて、喫煙者と同居することで肺癌の危険性は20~30%上がるとされています。また狭心症、心筋梗塞、乳幼児突然死症候群、出生時低体重なども受動喫煙と因果関係があると判定されています。
CEAの上昇を契機に是非禁煙を最近の民間健康保険では非喫煙の優良体では保険料の半額割引まで登場しています。また毎年5月31日が世界禁煙デーで今や禁煙は世界的潮流と言えます。保険適応の禁煙補助内服薬で多くの方が禁煙に成功してみえる昨今ですので、CEAの上昇を契機に禁煙を始められることを是非ともお勧めいたします。 |
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