ピロリ菌除菌について

#6. ピロリ菌除菌について

Q

47歳男性、30歳過ぎの頃から特に暴飲暴食後に胃の当たりの痛みが時々ありました。数年前には近くの医院で胃カメラの検査も受けましたが、軽い胃の粘膜のただれのみでした。ピロリ菌が悪さをして胃炎や胃潰瘍を繰り返すことがあり中には癌になる場合もあり保菌者は薬で殺した方がいいと最近テレビで知りましたが私の場合はいかがでしょうか?

A

50歳以上の日本人では約70%がピロリ菌に感染している

 酸度の高い胃の中では細菌は生息できないと従来考えられてきましたが、1982年にオーストラリアのバリー・マーシャル氏とロビン・ウォーレン氏によってヘリコバクター・ピロリ菌(以後ピロリ菌と略す)が胃炎や胃・十二指腸潰瘍の発生に深く関与していることが明らかとされ、両氏に2005年のノーベル医学生理学賞が授与されました。この菌は経口感染し、衛生環境の悪い発展途上国で感染が高いのですが、先進国(人口の約35%)に対して、日本は例外で人口の約50%が陽性と考えられています。また一端感染すると自然に消えることはほとんど無いため年齢と共に感染率も高くなり50歳代以上で約70%に陽性とされています。

胃癌の原因はピロリ菌そしてこの菌はその他の疾患にも関与

 疾患との関連では胃潰瘍で約 50~80%、十二指腸潰瘍では実に約 90~100%の高率でピロリ菌陽性です。こうしてかつてはストレスや生活習慣が原因と考えられていた胃・十二指腸潰瘍の治療も現在ではピロリ菌の除菌が主流となっています。ピロリ菌感染者の約20%が、何らかの胃・十二指腸疾患を患っていると考えられています。そして最近では、胃癌の原因はピロリ菌であることが明らかとなっていますし、その他胃の悪性リンパ腫あるいは特発性血小板減少性紫斑病という血液の固まる過程に必要な血小板が減少する疾患の一部さらに小児の鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹にもその成因としてピロリ菌が関与していることが明らかになってきています。

 

ピロリ菌感染の検査は血液、尿、便、呼気、胃カメラで可能

 ピロリ菌の感染を調べる検査には、大きく分けると胃内視鏡検査で粘膜を採って調べる方法と、血液や尿、便、呼気(吐いた息)で調べる方法がありますがいずれも感度・特異度とも80%から90%以上あります。現時点で除菌療法を受けることが保険で認められている病気は、ピロリ菌感染が原因と考えられる慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍や限局期の胃の悪性リンパ腫の一部、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌の内視鏡的切除後です。ちなみにピロリ菌感染者全体の0.4%が胃がん発生のリスクと言われています。

  従って今回のケースもまず胃カメラ等で胃潰瘍や十二指腸潰瘍の有無を確認していただき、もしそれらの疾患が認められればピロリ菌の感染の有無を確認し陽性であれば除菌療法をされることが望まれます。

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