骨髄の機能不全の病気とは?

#8. 骨髄の機能不全の病気とは?

Q

68歳の男性です。最近健診の血液検査で貧血に加えて他の細胞も減少しているとのことで、骨髄の異常も疑われ早急に専門医での精密検査受けるよう勧められました。早歩きや階段の際にやや動悸や息切れを感じる程度ですがどんな病気が疑われるのでしょうか?

A

血液には白血球、赤血球、血小板という主に3種類の細胞が含まれる

 全身の血管の中を流れている血液には主に白血球、赤血球、血小板という3種類の細胞が含まれています。白血球は細菌等の体内に侵入してきた異物を認識して除去する免疫という身体の防御機構を担う細胞です。これが減少すると免疫力が低下し感染症を起こしやすくなります。赤血球はヘモグロビンという酸素と結合するタンパク質を含む赤い細胞で、これが減少すると酸素運搬能力が低下するため貧血の症状が現れます。血小板は怪我をした際などに血液が固まる過程で働く細胞で、これが減少すると出血が止まりにくくなります。従ってこれら3系統の血液細胞は、生命の維持に必須の細胞と言えます。

 

血液は骨髄で造血幹細胞から成熟分化して絶えず新陳代謝している

 そしてこれらの細胞は骨髄と呼ばれる骨の中にある製造工場で、造血幹細胞(血液を再生するおおもとの卵のような細胞)から順番に成熟して3種類の血液細胞となって血液の中に流れ出て来ます。こうした血液の形成される過程を造血と呼び、順番に成熟していく過程を分化と呼びます。使命を全うした血液細胞は体内で死んでいきますが、その寿命は白血球で数日から数十年、赤血球は約120日、血小板は約7~10日とかなり差があります。血液は絶えず新しい細胞が補充されている、体内で最も新陳代謝の活発な細胞集団なのです。

 

3系統とも細胞数が減少している場合は骨髄での造血障害が疑われる   原因は多彩

 今回のケースのように貧血のみならず3系統とも細胞数が減少している場合は汎血球減少症と呼ばれ、まずは骨髄での造血障害が疑われます。原因としては薬の内服中であれば薬剤性造血障害、比較的若い方ではウイルス感染に因る一過性の減少や膠原病のような自己免疫疾患が原因となる場合も考えられます。高齢者では骨髄異形成症候群と呼ばれる造血幹細胞からの分化・成熟が障害される疾患も念頭に置く必要があります。また再生不良性貧血という造血幹細胞自体が障害を受けて減少してしまう病気、あるいは造血に必須のビタミンB12や葉酸の不足、ウィルス感染等を契機とし骨髄で造血細胞が破壊される(血球貪食(どんしょく)症候群)、非定型的な急性白血病、さらには骨髄に広範に癌細胞が転移したり、結核等の感染が骨髄に広がるような場合等、様々な原因が考えられます。汎血球減少症も含め血液疾患は症状が自覚し難い場合が少なくないため、特に汎血球減少症のような重篤な異常を指摘された場合は早急に血液内科の専門医を訪ねられることをお勧めいたします。

内科よもやま話一覧に戻る

このエントリーをはてなブックマークに追加

このページのトップへ